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たまにRapunzelや何かを書きます…多分。

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Rapunzel-金木犀の馨に染まる
気が向いたときに書く短文小説。
だからラプンツェル(?

なお、タイトルと中身は関係あったりなかったり。

書きたくて書いているだけなんで、批判意見いりませんw






金木犀の馨に染まる


風の温度が変わっていって、いつの間にか夏は足早に過ぎ去っていった。
何時しか肌寒くなって、熱風はもう吹いてこなくなった。

ふと、外を歩きたくなり、何も持たずに家を出た。
半袖ではもう寒い。かといって長袖では汗ばんでくる温度、
中途半端な、でも嫌いじゃない温度。

あちらこちらから優しい甘い馨が漂ってくる。
一年に一回、ほんの一時だけ香る甘い甘いにおい。
ゆっくりと馨のする方向へあてもなく歩いていく。


みつけた。


小さなオレンジ色の花弁、木にあふれかえるほどに咲き乱れる小さな花たち
どうして御前たちは季節を間違えずに咲き乱れ、散っていくのだろう。

優しく枝を手に持ち、爪で花を軽くはじき、馨を楽しむと季節の変わり目を感じる。
花の香りを目を閉じて楽しんでいると、母の手に抱かれた乳児と母親と手をつなぎ
歩く幼子が後ろを笑いさざめきながら、歩き去っていく。

花を引きちぎって、手の平に花弁をのせて、何処か哀しそうな誰かの顔が浮かんだ。

手の平に花弁をのせたまま、ゆっくりと家へむけて歩き始めると、さっき通り過ぎた
母親と幼子がトンボを虫取り網でとろうと頑張っていた。

「どうすればとれるの?」
幼子が無邪気に母親に尋ねる声が聞える。
母の手に抱かれた乳児は、不思議そうにその光景を無垢な瞳で見つめていた。

何時かあの子も母の手から降りて、一人で歩くのだろう。
もう秋になって、子供は音をたてるかのように大きくなっていく。
母親の心を置き去りにして。


手の平に馨をのせたまま、横を通り過ぎ、家へ帰る。
居間にいた母に「お土産」と言って、手を握ったまま、花弁を母の手へ移す。

部屋に馨が広がって、母の顔がほころんだ。
もうすぐ母になる姉の顔もほころんだ。


哀しそうな誰かの顔もほころんだような気がした。
中途半端なでも嫌いじゃない季節の一時。
by cafestar | 2005-10-05 18:36 | ラプンツェル
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CafestarのAdmin@エヴァンゼリンが書き綴りまする。時に日常、寓話、映画…と徒然なるままに。
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