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たまにRapunzelや何かを書きます…多分。

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薄氷の舞台-第2章1
のんびりとそして音沙汰無く一気に更新するのが
なんとも期待を裏切りつつも、裏切らないようで好きな私(ヲイ

前の回をまだ読んでない方のためにMORE機能
(最初の数行以外はクリックしないと開かない機能)で書いていきます。

では、おつきあいよろしく御願いします。
なお、内容はかなりシビアです。(シビアにどんどんなっていきますw)

読みたい方だけMOREをクリックして読んでください。
読んで不快になっても私は責任は負いません。

*なおもちろんですが、転載禁止です。

薄氷の舞台-第2章1



二人が村長の家についた時、六人を覗いてみなが集まっていた。

居間の暖炉側には、ただぼんやりと炎を見ているカタン、落ちつきなく手を擦りあわせるフリードリヒ、所在なさげに椅子に居心地が悪そうに座るユーゼフ、雪をはらい落とし暖炉で暖を取っているシュテルンがいる。
ソファーには、何時も通り目が世界を見ていないミネルヴァ、頬が紅潮しているセオドア、杖を片手に何やら思案しているルートヴィッヒ、静かに目を閉じているヴィルヘルミーネ、頬が青ざめているパトリシア、飄々とした表情の中に何かを幽かに見せているキールがいる。台所からは、何か刻む音が聞こえる。きっと何か作っているんだろう。サビーネとイヴリーンだと思われる声がする。

ヴィンセント、アドルフ、コンラッド、デヴィットの四人は村長の遺体を埋めるために、墓地へ出かけている。ドリスは何時もの用事を済ませるために、まだいない。後一人いないのは、村長自身のみ、すでに鬼籍に入っている。これが今の状況だ。

誰も喋るものはいなかった。その沈黙は台所からの声で破られた。

「何はともあれ、まずは食べることから始めよう!さ、サビーネお皿持ってきてね」
「はいはい、めんどうな物を私に回すのね…」

何とも場にそぐわない声ではあるが、みなが顔をあげる効果はあったようだ。イヴリーンが持ってきた大鍋には、ぐつぐつと煮えたぎるホワイトシチューがたっぷりと入っていた。後ろからサビーネがぶつぶつ言いながらシチュー皿を全員分持ってくる。もちろんスプーンも。確かに面倒だ。

「ああ、レイチェル!台所にパンがあるから持ってきて頂戴!」
着いて所在なげにフェリックスと佇んでいたレイチェルにサビーネが声をかける。どんな時でも自分のペースを崩さないサビーネに少し感謝をし、レイチェルはコートを脱いで台所へと足早に歩いた。そうあの居間の雰囲気は鬼籍へ入った人を悲しむ葬式なんてものは微塵もない。ただあるのは猜疑心とこの村の呪われている理由、そして今がその時であることへの恐怖感だけであった。自分がこれからみなへ話すことがどのような効果を生むのかレイチェルには検討もつかなかったが、一つだけ分かっていることはあった。

「私は…私とフェリックスは数日以内に死ぬ」

台所からパンを大量にのせたバスケットを持って居間へ戻ろうとした。入れ違いにヴィルヘルミーネが台所へきた。サビーネに何か頼まれたのだろう。自分をみつめるレイチェルの視線に気がついたのか、ヴィルヘルミーネは幽かに笑いながら言った。

「サビーネさんにカップとやかん、紅茶の缶を持ってくるように言われたわ。彼女人使い荒いわね。でも、今の状況だと気が楽になるわ。あの張りつめた居間には居づらいものね」
「そうね。本当に…」
「…レイチェル、貴女が言いたいことは分かるわ。でも今は生き残るのが先よ。…ね?」
「ええ、分かってる。私が何をするべきかも。今こうしてみなを同じところへ集めてわざわざ何をするかも…」
「なら、いいわ。ここで立ち話しているより早くパンを持っていってあげなさい。さっきからセオドアがお腹がすいたと言わんばかりにこっちをみているわよ」
「欠食児童ってやつかしらね?」
「さて、そんな可愛らしいものならいいけど」

ヴィルヘルミーネは台所へ入っていった。レイチェルはパンを居間のテーブルへどんと置いて、セオドアに笑いかけた。

「パンは逃げないわよ、セオドア?」

居間にほんの少しだけ温かい空気が流れた。イヴリーンはもくもくとホワイトシチューをよそっている。サビーネはもられたホワイトシチューにスプーンを添えて、皆に渡している。

カタンは炎から視線をホワイトシチューへ向け、サビーネに「ありがとう」といい、受け取っている。フリードリヒはホワイトシチューよりは先にパンを食べたいらしく、テーブルへ近寄ってきてパンを一つ手にとってちぎって食べている。ユーゼフは何か心に思うものがあるらしく、ホワイトシチューのにおいにようやく気がつき、顔をあげたところだ。

ミネルヴァはソファーでゆっくりとホワイトシチューの湯気に顔を近づけ、ぼんやりと食べ始めた。セオドアはパンを食い入るように見つめていたことに気がつかれていたことを恥ずかしそうに思いつつも、パンに手を伸ばしかぶりついていた。ルートヴィッヒは高齢のための緩慢な動作でゆっくりとシチューを口へ運ぶ。

パトリシアとキールは黙々とホワイトシチューとパンを平らげている。フェリックスはパンを持ってきたレイチェルと一緒にソファーへ座り、イヴリーンに渡されたホワイトシチューを食べ始めた。ヴィルヘルミーネが台所から重たそうにカップとやかん、そして紅茶の缶を持ってきたのをみたサビーネはやかんを暖炉へかけ、少し軽くなったお盆をヴィルヘルミーネはテーブルにのせた。

「村長の家がこんなに広くて良かったな…」とルートヴィッヒが幽かに呟いた。答えを期待していない声であるのは確かだ。彼は言葉を続けた。

「村長…アダムが残した本…まあ彼の遺言とでもいえばいいのか…。それがある。そしてそれを納めた箱がある。鍵は…レイチェル君が持っているね?」
急に話をふられたレイチェルであったが、予想していたものであったようで、パンくずを零すこともなく答えた。
「ええ、私が持っているわ。そして今持ってきてあるわ。でもその話は食べてからにしない?箱は逃げないし、まだ夜まで時間はあるわ。」

村長の遺体を埋めた4人が残り1人であるドリスと一緒に戻ってきた。
「ドリス、顔色が悪いけどどうしたの?」サビーネが戻ってきた五人用のシチューを装いながら言った。
「…蒼薔薇が…蒼薔薇が一斉に咲いているの。一日一輪しか咲かないはずの蒼薔薇が…」

「……………………………」

誰も答えるものはいなかった。予想が現実となり、予感は予言を越えつつあった。
by cafestar | 2005-05-09 13:49 | 薄氷の舞台
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CafestarのAdmin@エヴァンゼリンが書き綴りまする。時に日常、寓話、映画…と徒然なるままに。
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